エビデンスレベル

Last Updated on 2020年5月21日 by 院長

医学の世界において「エビデンス」というものが重要視されるようになっています。「科学的根拠」という意味になります。evidence-based medicine (EBM)という用語も頻繁に使われています。臨床医は皆「エビデンスがあるかどうか」を、ある程度は気にしながら診療を行ってるはずです。

蕁麻疹診療ガイドラインでは、以下のようにエビデンスのレベルを規定していました。

無作為化比較試験(randomized control trial; RCT)が重要で、一致した結果のRCTが複数ある、または複数のRCTのメタアナリシスで有効性が証明されている、というのが最もエビデンスレベルが高い(A)とされています。

ちなみに蕁麻疹の治療薬で、最もエビデンスレベルが高いのは、抗ヒスタミン薬ではなくてオマリズマブ(ゾレア®)です。メタアナリシスで有効性が証明されています。

さて、新型コロナウイルスの治療薬候補で、話題になっているアビガン®(ファララビル)ですが、今のところエビデンスレベルはC(とても低い)になります(中国の論文は取り下げ)。症例報告や専門家の意見のレベルです。現在進行中の臨床試験(RCTと思われます)の中間結果では、有効性があきらかではない、というような報道がされました(まだわかりません)。先に承認されたレムデシビルも、不一致な結果の少数のRCTがあるだけなので、B(低い)になります。各国で臨床研究が行われているはずなので、最終的に「新型コロナウイルス感染症に有効である」と判定されるかもしれませんが、逆に「有効ではない」と判定される可能性も高いです。従ってアビガン®に関しては、焦らず少なくとも我が国の臨床研究の結果を待って、有効性が科学的に証明されるまでは承認せずにあくまで臨床研究として使う、というのが医学的に正しい態度ではないかと思います。福岡県のように県医師会が一括して臨床研究の申請をして、アビガンが使えるようにしているところもありますので、そのような対応がいいのではないかと考えます。