疥癬

Last Updated on 2024年2月16日 by 院長

疥癬はヒゼンダニが皮膚に寄生してかゆみを生じる疾患です。特に就寝前、布団に入ったあたりで激しいかゆみが出ることが多いです(経験者談)。

ヒゼンダニ
ヒゼンダニ

ヒゼンダニは、皮膚にトンネルを作って中に寄生していますので、トンネルの部分から鏡検メスやピンセットを使って顕微鏡で検出すれば、疥癬と診断できます。ただ、トンネルもダニの局在も肉眼では分からないので、結局は痒い湿疹の部分を闇雲にメスでこすって顕微鏡でみるだけ、ということになっていました。現在は、ダーモスコピーを使うと、トンネルもダニの位置もよくみえるので、疥癬の診断がはるかに容易になりました。手のひら、指の間、脇の下、男性の場合は陰部にも寄生していることが多いです。

ヒゼンダニのダーモスコピー像
ヒゼンダニのダーモスコピー像

中央の二等辺三角形の黒い点がヒゼンダニです。大変小さいですね。実臨床での検出率は60%くらいと言われていて、検査で出ないからといって疥癬は否定できません。

この数ヶ月でかなり多くの疥癬患者さん、疥癬疑い患者さんを診させて頂いて、その経験から言うと、疥癬の診断はダーモスコピーだけで十分可能、と思っています。直接鏡検も行いますが、重症の患者さんは別にして、特に初期では直接鏡検では疥癬を検出できないことがあまりに多いので、あてになりません。

ただ前提として、疥癬を疑わないと診断は不可能です

「介護人の疥癬」といって、介護に関わっている方の上肢の屈側だけに疥癬を生じることがあるそうです(西日皮膚 83 (1): 5-6, 2021)。入浴介助の際に腕まくりで抱きかかえることで、同部に感染すると言われています。初期には手に寄生していないらしいので、専門医がみても疥癬を疑わない可能性があります。

治療は主にイベルメクチン(ストロメクトール®)内服か、フェノトリン(スミスリン®ローション5%)外用です。イベルメクチンの開発者の大村智先生はノーベル賞をとっておられます。

イベルメクチンもフェノトリンも疥癬の虫卵には効きません。したがって通常は、診断がついたら1回内服、または外用して、卵からダニが孵化したあたりの1週間後にもう1回治療が必要です。