酒さ、酒さ様皮膚炎
Last Updated on 2022年6月10日 by 院長
酒さ:中高年の顔面、特に鼻部に好発し、びまん性発赤と血管拡張が数ヶ月以上持続する慢性炎症性疾患。
酒さ様皮膚炎:ステロイド外用剤を顔面に長期使用することで、酒さに類似した紅色丘疹、びまん性潮紅、痤瘡が発生する。皮疹が口囲に限定されているものを口囲皮膚炎と呼ぶ。
(あたらしい皮膚科学 第3版より引用)
という定義です。どちらも自然免疫系が過剰に働いて炎症を起こしている、というように考えられています。
酒さは、
第1度(紅斑毛細血管拡張型)
第2度(丘疹膿疱型)
第3度(腫瘤型)
眼型
に分類されています。基本的に難治です。日本の教科書にはあまり詳しく書いてないですが、海外の教科書ではかなりのページ数をさいてあり、白人の方が我々有色人種よりも頻度が高いことをうかがわせます(一説には白人成人の少なくとも10%!)。生活指導としては、飲酒、刺激の強い食物、過度の日光暴露、ストレスなどをさけるようにします。治療はメトロニダゾールの外用、テトラサイクリン系の抗菌薬の内服を行います。最近ではイベルメクチンの外用薬(Soolantra® cream)というのが海外では使えるようですが、残念ながら本邦にはありません。腫瘤を形成するようになると、飲み薬や塗り薬だけでは難しくなってきます。毛包虫(ニキビダニ、Demodex)が多数検出されることがあります。
酒さ様皮膚炎の場合は、ステロイド外用薬を使っていれば中止をします。テトラサイクリン系抗菌薬の内服と、やはり酒さと同じようにメトロニダゾール外用を行います。痤瘡につかう外用抗菌薬でもいいのかもしれません。タクロリムス軟膏も有効です。口の周りや眼の周りに起こることが多く(開口部皮膚炎)、また子供にも起こります。酒さと同じく、毛包虫が多数検出されることがあります。生活指導も酒さと同様です。
2022年の日本皮膚科学会総会で山崎研志先生のご講演を聴きましたが、長期のステロイド外用などによって主に口や目の周りに症状がでているものを(狭義の)酒さ様皮膚炎するべき、ということでした。目の周りや口の周りをさけて丘疹・膿疱が出ている場合は、酒さ様皮膚炎ではなくて、「酒さのステロイド外用による悪化」だと思われます。
小児の場合は、テトラサイクリンは歯牙着色の可能性があって使いにくいので、マクロライド系(クラリスロマイシンなど)の抗菌薬を使うことになります。外用剤はタクロリムス軟膏かメトロニダゾール、または両者を併用します。今まで小児例で毛包虫を検出したことはありませんが、関与している例もあるのかもしれません。ブログで最近の文献を紹介しています。
メトロニダゾールの外用剤は、世界的には酒さや酒さ様皮膚炎の標準治療薬です。
当院では、メトロニダゾールの試薬を購入して、親水軟膏に溶かして自家調整したものをお渡ししていました(容器代込みで10g, 350円)。ご希望の方にはまだお渡しできますが、ロゼックス®ゲルが保険適用になったため、廃止する方向です。
医薬品のロゼックス®ゲルが「酒さ」に対して適応追加になりました(2022年5月26日)。下の写真の50gチューブだけではなくて、15gチューブもあります。0.75%なので、1日2回外用です。
メトロニダゾールがお肌に合わない、という方はアゼライン酸配合のDRX AZAクリア(税込み1980円)を試してもいいかもしれません。もともとはニキビに対して使われるもので、セカンドラインの治療としてざ瘡のガイドラインにも記載があります。