皮膚の病気

皮膚科領域におけるJAK阻害薬

JAK-STAT

Last Updated on 2020年5月21日 by 院長

本邦の皮膚科領域での最初のJAK阻害薬は、デルゴシチニブ(コレクチム®軟膏)です。しかし、JAK阻害薬はすごくhotな領域で、いろいろな薬剤があります。皮膚科以外ではすでに関節リウマチで用いられているお薬もありますし、治験中の新薬候補もたくさんあります。

2019年の総説ですが、皮膚科領域におけるJAK阻害薬についてまとめてある論文がありました。「シャリテ」というドイツのベルリンにあるヨーロッパ最大の大学病院の先生が執筆しています。ちなみに副院長は、シャリテに1ヶ月ほど研修に行っていたことがあります。

Emerging Topical and Systemic JAK Inhibitors in Dermatology. Solimani F, Meier K, Ghoreschi K. Front Immunol. 2019 Dec 3;10:2847.

デルゴシチニブは一番上のPAN-JAK INHIBITORです。PANはすべて、という意味。驚くべきことに、すでにJAKファミリーの組み合わせ、個別のJAKのそれぞれの阻害薬が存在し、フェーズは違えど治験が行われているようです。いわゆるアレルギー性の(type 2)炎症であれば、JAK3単独か、JAK1/3両者の阻害が良さそうに思いますが、治験の結果が出るまでは分かりません。ただ、このコロナ騒ぎで治験は止まってしまっている可能性はあります。

JAK阻害薬には、円形脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚筋炎、GVHD、化膿性汗腺炎(慢性膿皮症)、扁平苔癬(特に毛孔性扁平苔癬:Lichen planopilaris)、全身性エリテマトーデス、尋常性乾癬、乾癬性関節炎、尋常性白斑など、効果が期待されている疾患はいろいろあるそうです。

個人的には、円形脱毛症や尋常性白斑のような、あまり有効な治療オプションがない疾患での効果を期待しています。瘢痕性脱毛になってしまう毛孔性扁平苔癬も、かなり切実です。

円形脱毛症では、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)やバリシチニブ(オルミエント®)が効果があったという報告はすでに多くなされていますので、近い将来、有効な薬剤が適応になると思われます。