アトピー性皮膚炎
Last Updated on 2025年3月16日 by 院長
定義、病態
アトピー性皮膚炎(AD: Atopic dermatitis)は、日本皮膚科学会のガイドラインでは、「増悪・寛解を繰り返す、そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」、と定義されます。アトピー素因とは、①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生し易い素因を指します。
アトピー性皮膚炎の病態で重要なのは、皮膚バリア機能不全と、かゆみ、Th2(最近はタイプ2というそうです)炎症です。
治療
アトピー性皮膚炎の治療は、炎症を抑える(ステロイド外用、タクロリムス外用、他にもあります)、皮膚バリア機能の回復(保湿剤、スキンケア)、悪化因子の除去(環境アレルゲン、食物アレルゲン、金属アレルギーなど)の3本柱です。そのうちのどれもおろそかにはできません。
ステロイドの塗り方も重要で、できるだけ短い期間で一気に寛解状態にもっていくことが重要です。寛解しないまま、すこし良くなったら一旦やめて、また悪くなったら塗って、というリアクティブな外用方法では、状態を維持できないばかりではなく、病勢が徐々に悪くなってくる可能性があります。アトピー性皮膚炎の治療で一番大事なのは、一旦寛解させることです。寛解に到達してからが、ある意味治療のスタートになります。そこからは、寛解状態を維持するために予防的な外用(プロアクティブ療法)を行って、徐々に外用の間隔を開けていき(2日外用して1日休み→隔日→3日に1回か週2回→週1回のように)、最終的に週末だけステロイドを塗ったら良い状態が保てる、というあたりをゴールにします。そこまで到達するのには1年〜1年半かかると言われています。
寛解導入ができないと、長期間ステロイドを連続外用することになり、必然的に副作用が出てきます。アトピー性皮膚炎の治療で、ステロイド外用薬と保湿剤の混合したものを処方されることが多々ありますが、それでは寛解にもっていくのはまず不可能だと考えています。なぜなら保湿剤で薄まったステロイド外用薬をうっすら少量塗っているだけになってしまうからです。困ったことに、あまり効かないのに副作用はしっかりでてきます。しかしながら、べたべたした軟膏を嫌う患者さんは多いので、難しいところです。
上記のような外用メインで上手くいく患者さんもいますし、それだけでは不十分な患者さんもいます。ナローバンドUVBなどの紫外線治療も有効です。
最近、Th2(タイプ2)炎症の主たるサイトカインである、IL(インターロイキン)-4の受容体のα鎖のモノクローナル抗体である、デュピルマブ(デュピクセント®)という薬剤が中等症以上のアトピー性皮膚炎に対して用いられ、優れた効果を示しています。ただし、現在のところ投与するためにはいくつかの条件を満たす必要があります。詳しくはこちら。
そして、2020年6月24日に、アトピー性皮膚炎に対する新しい外用薬が20年ぶりに発売されました。外用ヤヌスキナーゼ阻害剤のコレクチム®軟膏です。詳しくはこちら。
さらにモイゼルト®軟膏、ブイタマー®クリームといった外用薬も発売されています。