多汗症

Last Updated on 2023年7月30日 by 院長

多汗症には、全身性のもの、局所性(体の一部だけ)のものがあります。またそれぞれが、原発性と続発性(他の疾患が原因で起こるもの)に分けられます。

ここでは、通常治療の対象となる、原発性局所多汗症について取り上げます。これに含まれるのは、

原発性手掌足底多汗症

原発性腋窩多汗症

原発性頭部顔面多汗症

の3つです。手掌と腋窩については、最近新しい治療薬がいくつか出てきています。

原発性腋窩多汗症に対する治療選択肢は、最近まで塩化アルミニウム外用と、ボツリヌス毒素(ボトックス®)注射でしたが、2020年11月26日にエクロック®ゲルが発売され、さらに2022年5月23日に、ラピフォート®ワイプが発売されました。

原発性掌蹠多汗症に対する治療選択肢は、塩化アルミニウム外用イオントフォレーシス、ボトックス®注射、交感神経遮断術でしたが、2023年6月1日にアポハイド®ローション(適応は原発性手掌多汗症のみ)が発売されました。

原発性頭部顔面多汗症に対する治療選択肢は、塩化アルミニウム外用内服療法、ボトックス®注射、交感神経遮断術(代償性発汗が必須だそうです)です。

 

多汗症の重症度は、ご本人の自覚症状です。Hyperhidrosis disease severity scale (HDSS)と言います。

1.発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない。

2.発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある。

3.発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある。

4.発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある。

3と4が重症とされています。

 

当院にはイオントフォレーシスの機器はありません。

ボトックス®注射は、腋窩多汗症に対して施行します。腋窩以外は保険適用がないので施行しません。

エクロック®ゲルは抗コリン作用のあるソフピロニウム臭化物を有効成分とした外用剤で、専用のアプリケーターを使って1日1回外用します。現在はツイストボトルという、容器の口をひねると1回分がでてくる剤型があり、こちらが主になってくるのかなと思います。重症の方(HDSSが3か4)しか使えません。より詳しくは、製造販売元(科研製薬)の運営するサイト(ワキ汗治療ナビ;外部サイト)があります。下にバナーを貼っておきますので、ご参照ください。薬剤が手に付着しない、というのが最大の売りかと思います。

ラピフォート®ワイプは、汗拭きシートのような剤型ですが、同じく抗コリン薬(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)の外用剤です。同じく重症の方(HDSSが3か4)の方しか使えません。使い捨て手袋などを使用しない限り、薬液が手に付着するので、外用後は手をよく洗う必要があります。

アポハイド®ローションは、適用は手掌だけですが、同じく抗コリン薬(オキシブチニン塩酸塩)の外用剤です。手に塗るのが目的ですので、外用後は乾くまで待って、不安なら乾いた綿の手袋で覆って就寝するのが良いかもしれません。就寝前の1回外用です。HDSSの縛りはありません。

塩化アルミニウムについては、保険診療で使える医薬品はありません。当院では、ism株式会社(広島県廿日市市の会社です)の、20%塩化アルミニウムゲル(ピタサラ)の取り扱いを開始しました。30gで2640円(税込)です。他にはセルニューのデオドラントクリームと、ケイセイのD-bar、D-tubeを取り扱っています。どちらもアルミニウムが成分に入っていますが、どちらかというとデオドラント寄りの製剤になります。

D-bar/D-tube

 

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