局所免疫療法
Last Updated on 2023年9月8日 by 院長
局所免疫療法は、人工的にかぶれ(接触皮膚炎)を起こす治療です。円形脱毛症の炎症から、かぶれの炎症に変調させることで、発毛を起こすと考えられています。
使用するSADBE(squaric acid dibutylester; 3,4-dibutoxy-3-cyclobutene-1,2-dione)とかDPCP (Diphenylcyclopropenone)という物質は、医薬品ではありません。発がん性はないと考えられています。DPCPよりSADBEの方が強い炎症が起こるらしく、海外の教科書ではDPCPで効果不十分ならSADBEを、という記載でした。
円形脱毛症以外にも、尋常性疣贅や伝染性軟属腫の治療に使うこともあります。
当院ではSADBEを使います。今のところ薬剤費は患者さんに請求せずに行っていますが、将来的に自費診療になる可能性があります。
まず最初に、SADBEにかぶれるような体質に変わって頂く必要がありますので、上腕の内側に、パッチテストのように薬剤を貼り付けて密閉します。2日経ったところで剥がすと、貼ったところは普通強くかぶれています。何ヶ月かじゅくじゅくが続く方もいらっしゃいます。これを感作と言います。感作が終わったら、脱毛斑に薄い濃度のSADBEを筆で塗っていき、かゆみがでるまで徐々に濃くしていきます。あせって急速に濃度を上げると、頭皮だけではなく顔面の皮膚や頭や首のリンパ節がひどく腫れたりして、日常生活に支障がでることがあり、お薦めしません。塗ってから2-3日くらいかゆみが続く濃度で、週に1回程度で気長に治療を続けます。
薬剤費は請求していませんが、治療に使う筆は、当院では実費(330円)で購入して頂きます(患者さんに持ってきて頂く方法もありますが、それぞれが違う種類の筆だと、薬剤の含み方がまちまちなので、ちゃんと塗れていなかったり、多すぎて薬剤が垂れて眼に入ったり、顔に付着したりします)。
局所免疫療法の効果の予測ができるかも、という意味で最初のSADBE感作を頭皮に行っていましたが、どうもあまり関係なさそうなので、最近は上腕内側に感作するようにしています。
個人差がありますが、塗ったところ(頭)だけではなく、塗ってないところや、全身に湿疹がでることがあります。治療をやめれば大抵は治ります。
特に小児の円形脱毛症の場合は、ステロイド外用以外は局所免疫療法しか選択肢がない、というのが実際のところです。
ただし、かゆみがでるのでアトピー性皮膚炎のひどい方には使いにくいです。