皮膚の病気
脱ステロイド療法(脱ステ)
Last Updated on 2021年10月2日 by 院長
日本テレビの某番組で、脱ステロイド療法を美化する内容のビデオが放送されたとして批判されています。番組内でアナウンサーが謝罪したり、番組HPで謝罪文が掲載されたりする騒ぎになりました。
私はその番組自体は視聴していないのですが、学会経由で情報を頂いて、HPから消される前の「オンエアのあらすじ」を読みました。「若い女性が、顔の肌荒れにステロイド外用剤を使用して、塗ったら良くなるが、やめたら悪くなるということを繰り返し、ついにはいくら塗っても良くならなくなった。そこでステロイド外用剤を中止したら、ひどいリバウンドが起きたが、1年(かそれ以上?)経過して改善した。」といった内容だったと記憶しています(違っていたらすみません)。
この経過はどうみてもアトピー性皮膚炎ではなくて、酒さ様皮膚炎です。顔面へのステロイド外用を中止するのは当たり前です。最初は接触皮膚炎や軽い湿疹だったのかもしれません。
脱ステ業界(?)の先生方が外用ステロイドの負の側面としてよく例にだすのが、この酒さ様皮膚炎です。なぜかというと外用ステロイドを中止することで確実に改善する皮膚の病気は、酒さ様皮膚炎か感染症くらいだから、と推測します。
酒さ様皮膚炎に対する外用ステロイドを中止するのと、アトピー性皮膚炎に対する外用ステロイドを中止するのは意味が全く異なります。中にはアトピー性皮膚炎で酒さ様皮膚炎を合併している方がおられますが、これらの疾患を(わざと?)混同するような話の持って行き方をしたのがこの番組の大きな問題だと思います。それに対する日本皮膚科学会の抗議もまたピントがずれていて、成育医療センター小児科の先生のご意見のほうが当を得ているように感じました(申し訳ありません)。
開業して気付いたのは、酒さ様皮膚炎の患者さんは結構たくさんおられるということと、酒さ様皮膚炎の患者さんの顔面にステロイド外用剤を処方し続ける皮膚科医も少なからず存在するということです。もしかしたら診察せずに薬だけ処方、なのかもしれません。ちなみに大学病院や総合病院勤務の皮膚科医が、酒さ様皮膚炎の患者さんを診る機会はほとんどありません。
番組を監修したとされる先生を擁護するわけではありませんが、酒さ様皮膚炎に関しては皮膚科医があまり偉そうに批判することはできないのでは、と個人的には思っています。
なお、当院ではアトピー性皮膚炎に対する「脱ステ」とか「脱軟」は推奨しておりません。よろしくお願いします。