外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬

Last Updated on 2020年5月14日 by 院長

アトピー性皮膚炎に対する新しい外用薬が、約20年ぶりに発売されます(プロトピック®軟膏は1999年発売)。

日本たばこ産業(JT)が製造し、鳥居製薬が販売する、コレクチム®軟膏です。一般名はデルゴシチニブ。椛島健治教授率いる京都大学皮膚科とJTが8年がかりで作った、純粋にmade in Japanの薬剤だそうです(椛島教授のfacebook、ブログから)。

コレクチム軟膏

ヤヌスキナーゼ(Janus kinase: JAK)という細胞内シグナル伝達分子を阻害します。”JAK”のほうが通りがいいですね。下の図の受容体の細胞内ドメインにくっついている分子です。私はJAKに結合する”STAT”という分子の研究していたことがあり、懐かしいです。

JAK-STATシグナル伝達経路、というのは、インターロイキン(IL)と呼ばれるサイトカインの細胞内シグナル伝達によく使われています。もちろんアトピー性皮膚炎で重要なIL-4/IL-13受容体のシグナル伝達にも使われる経路(左の方)です。デュピクセントが阻害するのよりも下流を抑制するわけです。JAK1/2/3/Tyk2のすべてのJAKを抑制しますので、かゆみをもたらすIL-31のシグナル(右の方)も抑制する、ということになります。それだけではなく、他のJAKを使っているすべてのサイトカインのシグナルも抑制します。

私は使用経験はないですが、「刺激の少ないプロトピック®軟膏」という印象のようです。プロトピック®軟膏がいろいろな理由(刺激感やヘルペス感染症)で使えない方には、良い適応かと思います。

薬価収載はされていて、1 gあたり139.70円です。プロトピック®軟膏の先発品が99.90円なので、それよりも高いです。製薬会社のMRさんは新型コロナウイルスの影響でみんな訪問自粛しているので、直接はきいてませんが、販売は6月24日のようです。7月頃には患者さんに使えるのではないかと心待ちにしています。

アトピー性皮膚炎のところにも発売されたらページを追加しようと思います。