ジェネリック医薬品について

Last Updated on 2021年3月11日 by 院長

最近、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事が相次いでいます。小林化工と日医工ですね。

小林化工の方は、水虫薬に睡眠薬の成分が混入、というあおり気味のタイトルで報道されていたと記憶しています。

「水虫薬」という報道をされたのはイトラコナゾールという抗真菌剤で、爪白癬に適応のある薬剤ですが、パルス療法といって、月のうち1週間だけの内服を3ヶ月間、という変則的な内服の仕方をします。飲み合わせが悪い薬が余りに多い薬剤ですので、他の内服をいろいろされている高齢の方には使いにくい薬剤です。当院であれば、マラセチア毛包炎や、小児のケルズス禿瘡(動物由来の菌による頭部の白癬)にイトラコナゾールの内用液を使うくらいで、成人の白癬の治療に使うことはまずありません。私見ですが、ヤンセンファーマの先発品(イトリゾール®)ですら効果が微妙な薬剤なので、後発品は推して知るべし、です。ただ先発品は薬価が高いです。

日医工の方は、健康被害がでているわけではないですが、製造工程に問題があり、業務停止命令がでました。

なんといっても日医工は大手なので、占有率の高い薬剤は市場から足りなくなる可能性があります。日医工といえば、数年前に同社のセファゾリンの供給が停止になり、代替品をどうするか、という騒ぎになったことがありました。そのときは海外の原料を作っているところの問題で、日医工自体の問題ではなかったようですが、皮膚の軟部組織感染症(蜂窩織炎など)ではセファゾリンが第1選択薬になるので、ないと病院は大変困るのです。オロパタジンは蕁麻疹によく使いますが、先発品(アレロック®)だと出ないけどジェネリックに変えたらまた出てきた、という慢性蕁麻疹患者さんのお話はしばしば聞くので、私は先発品の方が好きです。後発品で大丈夫な方はもちろん宜しいかと思います。ヘパリン類似物質の保湿外用剤も多種類販売していますが、そちらは他の製薬会社と併売です(工場も違うそうです)。もし日医工がからんだ製品を避けたいという場合は、マルホの先発品(ヒルドイド®)を選択せざるを得ないと思います。

とはいえ、ジェネリックの内服薬は、生物学的同等性試験を経ているので、品質管理がきちんと出来ているのであれば、比較的安心して使えると思います。ちょっと効きが悪い、というのはあるかもしれませんが。問題なのは外用薬です。

ジェネリック医薬品というのは、主成分は同じなのですが、オーソライズドジェネリックでない限り添加物が異なっています。外用薬で一番問題になるのが添加物による接触皮膚炎です。よく知られているのがクロタミトンというオイラックス®クリームの有効成分で、ジェネリックではこれをステロイドの可溶化剤につかっているケースがあり、接触皮膚炎を起こすことがあります。一応、生物学的同等性試験も経ているのですが、類似性があるとされる幅が内服薬に比べて広い(±30%)のと、その評価法(角質内の薬剤濃度など)で本当にいいのか?という外用剤特有の問題もあります。(参考文献:外用療法の理論と実際 Visual Dermtology 18(5), 2019)

昔(ジェネリック医薬品が出だしたころ)は、「ジェネリックに変更しても良い」というチェックをして、ジェネリックを処方していました。それが今は、「ジェネリックに変更してはダメ」というチェックを入れない限り、ジェネリックが処方されます(一般名処方)。この場合は患者さんが先発品が良い、と言えば先発品になりますし、何も言わなければおそらくジェネリックになります。

医師側としては、一般名処方をすると加算がつきますが、クリニックで院外処方をする分にはジェネリックの割合が低くても今のところペナルティはありません。ただし調剤薬局においては、ジェネリックの割合の高い薬局には「後発医薬品調剤体制加算」というご褒美、低い薬局には「後発医薬品減算」というペナルティが科されます。自分のクリニックの門前薬局から頼まれると、医師側でもジェネリック(にしてもいい)処方を増やさざるを得ないという状況が生まれています。

発売から10年か15年か経ったら先発医薬品の薬価を下げればいいじゃないかと思いますが、そうもいかないのでしょうか。