皮膚の病気

円形脱毛症とコレクチム®軟膏

Last Updated on 2021年10月19日 by 院長

アトピー性皮膚炎の治療薬である、コレクチム®軟膏が6月末に発売されました。

アトピー性皮膚炎で、特に顔の皮疹で困っていた患者さんについては、刺激がなく良い薬だと思います。

ところで、最近お問い合わせがあるのが、円形脱毛症とコレクチム®軟膏です。

内服のJAK阻害剤(tofacitinib: 商品名ゼルヤンツ®や、baricitinib:商品名オルミエント®)では、円形脱毛症に効果があるという報告が海外でなされています。

本邦でも現在治験を行っているところのようで、結果はまだ分かりませんが、その治験を受けておられる方が、経過をSNSに上げているようです。その方が二重盲検の実薬なのか偽薬(プラセボ)なのか、はたまた実薬の維持投与中なのかについては分かりません。

コレクチム®軟膏についても、論文を見る限り円形脱毛症に対して治験は行われている(いた?)ようですが、結果はまだオープンになっておりません。

今の段階で、円形脱毛症に対して、保険診療でコレクチム®軟膏を処方はできません。アトピー性皮膚炎ではない方に、「アトピー性皮膚炎」の保険病名をつけて処方している例があるとも聞きましたが、まっとうな医療行為とは思えません。

そして、「効果がない」という治験の結果になることも十分考えられます。新型コロナウイルスに対するアビガンの例を思い出して頂けるといいです。「すごく効く」「アビガンで助かった」と投与された患者さんやマスコミなどが大騒ぎした割に、きちんとした臨床研究を組んでやってみると、やっぱり大して効かない、ということになりそうです。少なくともアビガンは新型コロナウイルスに対しての「特効薬」にはなり得ないと思われます。

追記(9月24日):アビガンの有効性が確認できたとのことで、富士フイルムが承認申請する、という報道がありました。

また、ゼルヤンツ®やオルミエント®が円形脱毛症に効くから、コレクチム®も効くはず、という理屈にはなりません。阻害するJAKも違いますし、コレクチム®はしょせん局所投与です。

焦らずに、本邦での臨床試験の結果がでて、何かしらのJAK阻害剤が保険適応になるのを待つべきだと思います。

コレクチム®を勝手に使っていると、もし効果が期待できる内服JAK阻害薬の治験の話があったとしても、その対象からはずれてしまうかも知れません。

追記(2021年10月19日):デルゴシチニブの外用(つまりコレクチム®)は円形脱毛症に対する第Ⅱ相ランダム化試験で有効性が確認されなかったそうです(「エビデンスに基づく皮膚科新薬の治療指針(中山書店)」から)。