脂漏性皮膚炎、癜風、マラセチア毛包炎

Last Updated on 2020年6月3日 by 院長

脂漏性皮膚炎、癜風(でんぷう)、マラセチア毛包炎は、どれもが、マラセチア(癜風菌)というカビ(真菌)が関わる疾患です。

マラセチア属真菌系統樹と脂漏性皮膚炎
マラセチア属真菌の系統樹 (Saunders CW, Scheynius A, Heitman J. PLoS Pathog, 2012.)

 

マラセチア属真菌は、現在14種類に分類されています。

人間の皮膚から分離される頻度が高いのは、Malassezia globosaおよびMalassezia restrictaです。常在真菌と考えられています。

脂漏性皮膚炎は、脂漏部位(頭皮、顔面など)に落屑性紅斑が出来る病気で、マラセチア属真菌による感染症、というわけではありませんが、病態に関与していると言われています。ひどい人は、落屑を染色して、顕微鏡でみる(直接鏡検)と、マラセチアが検出できることがあります。マラセチアは脂漏部位(頭皮、顔面、胸部、背部など)に多く、リパーゼを産生して皮脂を分解し、その分解産物が皮膚炎を起こします。夏よりも冬に増悪する印象です。治療は抗真菌剤外用、ステロイド外用、ビタミン剤の内服などを行います。また脂漏性皮膚炎やふけの多い人用にシャンプー・リンスなどが市販されています(コラージュフルフルシリーズ)。ちなみにフルフルというのは、マラセチア属真菌の1つで、以前は主なものと思われていたMalassezia furfurが由来のはず、です。

癜風とマラセチア毛包炎は、どちらもマラセチア属真菌による感染症です。

癜風は、汗かきの人に多く、相撲取りにも多いといわれています。体に褐色の斑ができて、鏡検用のメスでこすると、微細な落屑が生じることが特徴です。鏡検すると、下の写真のように菌糸形、酵母形のマラセチアが見て取れます。夏に多いです。

マラセチア顕微鏡像
マラセチア

 

マラセチア毛包炎は、マラセチア属真菌が、毛包を侵しておこる感染症です。ニキビのようですが、躯幹に多いです。夏に体にできる「ニキビ」は、ほとんどマラセチア毛包炎です。

マラセチア毛包炎臨床写真
マラセチア毛包炎
マラセチア酵母形顕微鏡像
マラセチア、酵母形

直接鏡検では、染まるのにやや時間が掛かりますが、菌糸形ではなく、酵母形のマラセチアが検出できることが多いです。

癜風の治療は、抗真菌剤の外用です。

マラセチア毛包炎の場合は、抗真菌剤の外用でも良いですが、抗真菌剤(イトラコナゾール)の内服の方が速やかに効果を発揮します。ちなみに日本皮膚科学会皮膚真菌症ガイドライン2019では、マラセチア毛包炎に対する抗真菌剤外用の推奨度はBで、抗真菌剤内服の推奨度がAです。後発品(ジェネリック)では効果が出にくい方がおられますので、高いですが先発品(イトリゾール®)をお薦めしています。

アトピー性皮膚炎のある方では、マラセチアに対する過敏性を持っている人が多いので、マラセチア毛包炎になるとひどく痒かったり、膨疹ができたりすることがあります。